今日の建設業界で普通行われている「とりあえず見積もれる図面を作れ」という号令の下での「とりあえず」システムでは、「肉か野菜か」以上の細かいスペックを図面で指定する余裕は与えられない。とりあえず肉か野菜かだけを図面に書きこんでおいて見積もりをとり、現場になだれこむのである。いざ現場がはじまってから、「イベリコの豚をこんな形にこげ目をいれて……」みたいな実際的なスペックを建築家がいいだそうものなら、例の「工事費はアップです。
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工期は間にあいません。誰が責任をとるんですか」というゼネコンの現場所長の一喝を浴びせられて、やむなく冷凍のすかすかのブロイラーを食べさせられるはめになるのである。「とりあえず」の図面では、そんなすかすかのものしかスペックのしようがないのである。「肉」ととりあえずスペックしたならば、最低の肉を食べる以外の選択肢は残されていないのである。その手のブロイラー建築で街や田園が埋めつくされるような悲劇的事態をさけようと思うなら、設計開始後なるべく早い時期に、モックアップを作りはじめなければならない。通常の設計プロセスだと、まず建物の配置を決定し、平面(間取り)を決め、断面を決めて、構造計算を開始し、空調、給排水などの設備設計がはじまり、最後の最後に仕上げ材料が「肉か野菜か」みたいな形で決められる。その時はスケジュールとの格闘でほとんど頭が真っ白な時だから、「肉か野菜」かを決めるだけで精一杯である。モックアップをじっくりと作って検証する時間の余裕があるプロジェクトは、今まず存在しない。かくして、すかすかのブロイラースペックで都市は埋め尽くされ、都市の悲劇は加速する。